コンピュータ上にヒトは再現できるか?

熱環境システム研究室 伊藤一秀 教授

Kazuhide Ito

人間と室内環境,そして両者の相互作用をコンピュータ上に再現し,環境設計に役立てるための研究に取り組んでいます.研究室には建築環境工学や公衆衛生工学,機械工学など,多様なバックグラウンドを有する学生が在籍しており,既存のディシプリンにはとらわれない新しい視点での研究に力を入れています.


1. In silico human modelの開発

人体の表面幾何形状をコンピュータ上に詳細に再現した数値人体モデル(in silico human)の作成に取り組んでいます.手や足の指先だけでなく,鼻腔・口腔から気管支といった呼吸器系器官の幾何形状の再現にも取り組んでいます.この数値人体モデルと計算流体力学CFDの技術を統合することで,人体周辺に形成される複雑な流れ場や温度場と人体生理反応の関係を詳細に把握し,室内環境設計に役立てるための研究を行っています.

2. In silico surrogate modelの開発

医学の発展のためには動物実験は避けられませんが,コンピュータ上に動物そのもの,もしくはその生理を再現できれば,動物実験に代わる新しい研究ツールを提供出来そうです.本研究室では,人間だけで無く,小形齧歯類(ラット)やイヌ,サルといった動物の数値気道モデル(経気道曝露評価用のin silico surrogate model)の開発にも取り組んでいます.

3. 室内環境解析技術の高精度化に関する研究開発

室内に形成される流れ場や温度場,光環境といった各種の物理環境要素を高い精度で予測する環境解析技術の開発に取り組んでいます.化学物質濃度分布,微粒子濃度分布や微生物の増殖現象,といった室内の化学的・微生物学的な要素に関しても,コンピュータシミュレーションするためのモデル化や数値解析手法の開発に取り組んでいます.