Sustainableで心地よい都市・建物デザインを熱流体工学の観点から追求したい

グリーンアジア環境学/都市建築環境工学研究室 萩島 理 教授

Hagishima Aya

都市居住者が世界人口の過半数を占める現在,都市環境の質,例えば温度,風,空気の清浄度は人々の健康,安全安心,快適性に多大な影響を与えています.これに対し本研究室では,伝熱学・流体力学・建築環境工学・風工学・統計学などの知識を屋台骨として,sustainableで心地よい都市空間,建物空間を追求すべく様々な基礎的研究に取り組んでいます.以下にその例を紹介します.

1.気候風土,生活様式に即したsustainable cities/ buildings 開発のための研究

機械に頼らず建築構造物本体のデザインの工夫で快適な室内環境を達成しようという所謂パッシブデザイン,空調や照明などのエネルギー効率向上に加え,近年では太陽光発電等の再生可能エネルギー電源導入や,それに伴う電力需給ギャップを制御し省エネと快適性を両立させるためのスマートシティ/ハウス技術に注目が集まっています.これらの研究開発においては,電力や空調などのデマンドの時系列変動の統計的バラツキを適切に予測評価する事が重要となります(図1).コンピューターの性能が向上し物理モデルによる建物空調熱負荷の数値予測が容易となった現在,私たちは人間行動の不確実性の予測評価が重要な課題として研究に取り組んでいます.また目を海外に転ずるとASEANなど熱帯・亜熱帯の

新興国は巨大な人口を抱え今後地球スケールでの環境負荷においても少なからぬ割合を占める事が予測されているなか,こうした地域の将来の大規模都市開発において先端技術導入による省エネ・低炭素化を促進するために,国際共同研究を通じて現地の気候や人々の生活習慣の特性を考慮した新しい需要予測モデルの開発を行っています.

2. Well-ventilated cities/ buildingsの究明

都市や室内空間を吹き抜ける風はヒートアイランド緩和やパッシブな室内環境調整において重要な役割を果たすため,どのような都市形態,建物デザインが望ましいか研究者間で議論が行われてきました.しかし,建物の通風,歩行者の温熱快適性や突風リスク,汚染物質や有毒ガスの拡散,都市表面の大気加熱など対象とする現象や空間スケールによりその評価方法は定まっていません(図2).これに対し私たちは,風洞実験,コンピューターによる数値解析,屋外気象観測など様々なアプローチで都市の風通しと都市条件の関係についての研究を行っています.都市の凹凸周りの乱流現象として無数の渦が姿を変えながら流れていく様を観察できるのもこの研究の醍醐味の一つです.