超音速現象など高速流れを科学する

エネルギー流体科学研究室 青木 俊之 教授

Toshiyuki Aoki

地球環境保全の観点から,エネルギーの有効利用と公害抑制に関する技術開発を進めるためには,気体の流れを科学する流体力学の知識が必要になります.高速輸送機器の高効率化を念頭においた超音速流れで発生する衝撃波や波動伝播などの現象の解明,レーザーを用いた複雑流れの最先端可視化計測法の開発,コンピュータを駆使した流れの数値シミュレーションなどの研究を行っています.

1. 高速鉄道トンネルの波動現象

近年の列車の高速化により,新幹線などの高速鉄道用トンネル出口から発生する衝撃的騒音(微気圧波)が問題になっています.これらの騒音に対する適切な低減対策を講じるためには,管内を伝播する圧力波の波動特性や放出させる衝撃的騒音の特性を知ることが必要です.本研究では,長さ100mの波動伝播シミュレーターを用いて,伝播する圧縮波や出口から放出される衝撃的な騒音の特性を高感度圧力計及び精密騒音計を用いて高精度に測定し、さらに流れ場の数値解析も利用して列車・トンネル系の波動現象の解明を目指してます.

2. 管内波動の非定常境界層の解明

急激な圧力変動を伴う圧縮波、衝撃波、膨張波などの圧力波がガスパイプラインや長大トンネルなどの管路内を長距離伝播する際の急激な圧力変動を正確に予測するためには,管内波動の長距離伝播過程におけるこれらの波の強さの減衰や波面の時間的変形,すなわち波動伝播の非線形現象や管内流れを正確に知ることが必要です.本研究では,波動シミュレ—

ター内の波動の長距離伝播における管内圧力の変動現象を対象とし,レーザー差動干渉計を用いて,管内を長距離伝播する圧力波背後に発達する非定常流れの助走部及び発達部における層流から乱流への遷移現象を測定し,圧力波の圧力変動現象に対する非定常境界層の影響を研究対象としてます.

3. 防音ハウスの超低周波騒音の低減

騒音問題には様々なものがあり,騒音の中でも超低周波音は耳に聞こえない音ですが,窓や建具と共振して二次的な騒音を引き起こしたり,直接人体に悪影響を与えたりします.超低周波音は水道工事,地下鉄工事等で発生し,その騒音対策として防音ハウスと呼ばれるものが用いられています.この防音ハウスには開口部が設けられており,ここからの超低周波音の漏れが問題となります.本研究では,騒音の位相に対し,逆位相の音を重ね合わせ打ち消すアクティブ消音による騒音低減を目的としています.