コンピュータ上にエンジンを再現したい

熱機関工学研究室 田島 博士 准教授

Hiroshi TAJIMA

燃料を化学反応させ最終的に動力・電力を作り出す装置である熱機関(エンジン)の用途は自動車だけではなく,飛行機を初め発電用まで時代と共に様々に変化しています.その現象は,力学・化学反応を考慮する必要があり,このようにエンジンは,最も複雑な類の機械であるといえる.よって,その様々な用途に対応するためにエンジンシステムを構成する要素の相互作用を知ることが必須です.熱機関のサイズも原動機に用いられる50ccから体積比で30万倍以上ある船用機関まであるのだが,素直な相似則はほとんど無いのが現状です.当研究室では,自動車のエンジンと船用のエンジンにおいて,形状や燃焼方式が異なることを考慮しながら,それぞれに相似則や構成部品の相互作用などの影響を数値化し,各々の長所を取り入れて,更なる最高効率の向上を目指しています.

1. エンジンシステムのシミュレーション

図1で示すように,エンジンを構成する部品である燃焼室・吸排気バルブ・燃料噴射系統・タービンや配管等を各々モデル化し,流体・熱伝達・燃焼計算や触媒反応まで含めたエンジン全体の計算を行う.吸排気システムおよび配管流れは,1次元の流体計算で行い,燃焼に一番重要である燃焼室内を3次元CFDにより計算します.さらに,人間が運転する時のアクセルの動きに応じて,条件を変更し,エンジンの性能をパソコン上で評価できるようなモデル開発を行っています.最終目的は,エンジンの自動電子制御による低燃費化,排気ガスのクリーン化になるような指針を作ることを目指します.

2. ガスエンジンの点火方式のモデル開発

ガスエンジンにおいて,低NOx化と熱効率の向上の同時達成する最も有効な手段として,混合気を空気で希薄にして燃焼を行う極希薄燃焼の実現が非常に重要とされています.ただし,この燃焼方式は空気で希薄するので,点火および火炎伝播が安定しません.よって,安定した点火・火炎伝播を得るために副室式トーチ点火希薄燃焼方式が有力とされています.この方式は,燃焼室内に設けられた副室と呼ばれる小さな燃焼室から強力な火炎ジェットを噴射する方式なのだが,副燃焼室の大きさや火炎ジェットの本数,混合気の濃度による性能が大きく左右されるのだが,この火炎ジェットについて燃焼反応も含めて体系的にまとめた例が無いため,副室を模擬した燃焼装置を製作し,その実験結果を基にモデル開発を行います.図2参照.