コンピュータベースの室内環境評価モデルの開発
熱環境システム研究室 Sung-Jun Yoo 助教
Sung-Jun Yoo
室内の空気・熱環境形成と生体反応は密接な関係があり,健康・快適で且つ生産性の高い室内環境を創造するためには,室内環境要素と人体の相互関係を総合的に予測・評価することが必須となります.熱・空気環境に代表される室内環境の質(IEQ)と人体影響を高い精度で予測することは工学的に重要な課題でありますが,特に設計段階において被験者を用いて実験を行うことは費用や時間の観点でほぼ不可能であり,また倫理的な問題より一般的な環境条件を大きく逸脱した環境下での実験は禁止されています.この点で,本研究室では室内環境解析用数値人体モデル(Computer Simulated Person)に着目し,室内環境質を総合的かつ高精度に予測・評価することを目指しています.
1. 人体熱モデルを組み込んだ数値人体モデルによる室内熱環境評価手法の開発
室内に形成される非定常かつ不均一な熱環境による人体への影響を評価するためには,人体熱モデルによる熱収支計算及び人体皮膚温度の予測が必要とされています.本研究室は,今まで提案されている各種の非定常人体熱モデルを数値人体モデルと統合した新たな室内熱環境評価モデルの開発に取り組んでいます.更に,人体形状から呼吸器系詳細形状まで再現した統合数値人体モデル(CSP)を使用し,CFD解析から求まった呼吸による熱損失量予測結果を反映することで人体熱モデルの予測精度改善に貢献したいと思います.
2. 室内―気道内領域を対象とした呼吸空気質及び経気道暴露予測モデルの開発
全統合型数値人体モデル(Computer Simulated Person)は,室内空間から鼻腔,口腔を介して気道内まで連続した解析領域を再現しており,室内汚染物質濃度分布及び呼吸により流入された気道内汚染物質濃度分布までを高精度に予測することが可能となります.本研究室では,室内汚染物質の不均一濃度場の性状や,気道内汚染物質濃度分布,気道内汚染物質吸着量まで総合的予測が可能な暴露評価に関する研究を行っています.最終的には,汚染物質の体内吸収メカニズムを再現するために生理的薬物動態解析モデル(PBPKモデル)との連成解析を行い,経気道暴露リスクの定量的評価モデルを構築します.