次世代型ヒートポンプ・冷凍空調システムで地球環境問題に取り組む

熱エネルギー変換システム学研究室 小山 繁 教授

Shigeru Koyama

本研究室では,地球環境への負荷を最小にするための高効率・高性能な熱エネルギー変換システムの開発を目指しています。物理現象から要素技術,システムへとつながる幅広い視点を持って,熱媒体の凝縮・沸騰伝熱現象を中心に,熱および物質の同時移動過程における基本的機構の解明に取り組むと共に,それらの過程を応用した次世代型ヒートポンプ・冷凍空調システムに関する研究を行っています。

1. 低GWP冷媒を用いたヒートポンプサイクル

冷凍空調分野では,冷媒の漏洩による地球温暖化への影響が問題とされており,温室効果の小さい冷媒を使用した冷凍・空調機器の開発が急務となっています.空調システムで現在主流となっている冷媒は,排出量が極めて多いために地球温暖化の主要因となっている二酸化炭素に比べて,千倍以上も温室効果が大きいのです.そこで,二酸化炭素と同程度に温室効果が小さい冷媒(HFO系冷媒と呼ばれます)を中心とした低GWP*混合冷媒を用いたヒートポンプサイクルの性能実験を行い,その動作特性の解明とシステム最適化を試みています.(*GWPとは地球温暖化係数のこと)

2. プレートフィン熱交換器内凝縮特性

省エネルギー技術のひとつとして工場排熱をヒートポンプシステムにより高温熱源として利用する方法が注目されています.しかしながら,システム開発に当たっては,熱交換器の高性能化と地球温暖化への影響が小さい冷媒の導入が不可欠です.そこで,低GWP冷媒として注目されているHFO系代替冷媒のプレートフィン熱交換器内での凝縮特性を明らかにし,高性能熱交換器の熱的設計法の確立を目指します.

3. 低沸騰現象を応用した高発熱電子機器冷却システム

電子機器の安定的動作を保証するための冷却技術として,現在,空冷,水冷などが主として用いられています.しかし,電子機器の更なる高性能化・高集積化によって,従来の方式では必要な除熱量に対応できなくなることが危惧されます.そこで,冷媒による沸騰現象を応用して,従来技術よりも高い熱流束で冷却が可能な電子機器冷却システムについて研究しています.